できれば行きたくない店の話
行きたくないが、つい行ってしまう店がある。
パチンコ屋でも、呑み屋でもない
それは、コンビニだ。
正確に言うと会社最寄りのセブンイレブンのことである。
このセブンイレブンで僕は何度も嫌な思いをしており、その度に「二度と来るか!」と心に誓うのだが、立地の良さと他のコンビニに比べ弁当が美味かったりするのでつい「あ、いえいえ、先日の件なら気にしてませんよ~」みたいな面を引っ提げて利用してしまうのだ。
その嫌な思い出というのは例えば・・・
タバコを買いに行ったある日の出来事
店内に入ると初めて見る男性店員がレジに立っていた。
彼の風貌は、スキンヘッドで修業が厳しくて逃げだした気弱な坊さんのような感じだった。胸には初心者マークがついており、どうやら研修中らしい。
で、そんなことは気にせずいつものようにレジでタバコの銘柄を伝えると、その店員は急に360度くるくる回転し始めたのだ・・・・
吹き出しそうになるのを堪え、恐らく銘柄ではわからないのだと推測し次は棚の番号で伝えた。
すると、やっと回転を止め、要望通りのタバコを手に取る坊さん店員。
が、極度の緊張のためか手がプルプルと震えているのだ。
大げさではなく、振り幅が25cmくらいあった。それはもう、プルプルではなくブンブンであった。5歳くらいのバースデーケーキなら全てのロウソクの火を消せるくらいの勢いだった。
おいおい、大丈夫か~と思いながら見守っていると案の定、手に持っていたタバコをその震えの勢いで投げ飛ばしてしまったのだ。
それだけなら、全く問題なかったのだが・・
その後なにが起きたかというと、彼は飛ばしたタバコを焦りながら駆け足で取りにいき、タバコの一歩手前で何もない床につまづいてタバコを踏ん付けてしまったのだ・・・
僕は何か見てはいけないもののような気がして、レジ台の一点を見つめているフリをした。
すると、そのレジ台にペシャンコになったタバコがポンと置かれた。
「いやいや、このタバコ潰れてるじゃないですか~」と僕が言うと坊さん店員は「あ、本当ですね、交換します」とかなり白々しく気付かなかったフリをして交換してくれた。そしてまた替えのタバコをブンブンしていた・・・
その時、彼の額には玉のような汗が光っていたので、恐らく大勝負に出たのだろうが、それは無理である。だって、僕は市原悦子よろしく現場を見ていたのだから。。。
その後も坊さん店員は僕に何度かミスの贈り物をくれた。
チャンポン麺についているお酢をレンジにかけて爆発させたり、またタバコを飛ばしたり・・・
しばらく休んだらどうだ?と声をかけてあげたい。
そして、この店への苦手意識を決定づけたのがこれから書く出来事だ。
その週はナナコカードの新規入会キャンペーンが開催されており、行くたび何度も入会を勧められ、そのたびに面倒なので断っていた。
そのセブンイレブンはオーナー(石を磨いてそうなじいさん)を中心として、バイトのおばちゃんたちが張り切って働いており、こういったキャンペーンの勧誘はとてもしつこいのだ。
毎日のようにこの店を訪れる僕としては、早くキャンペーンなんか終わってくれ!と切に願うばかりだった。まあ、入会してしまえば良いのだが。。。なんか嫌だったのである。
で、キャンペーンが始まって5日目の昼、いつものように昼飯を買いに行った。
この店はオフィス街のちょうど良いところに立っているので、昼はもの凄く混んでおり、レジは長蛇の列になっている。
弁当を選び、レジに並んで順番を待つ。数分後、自分のレジの番がやってきた。
そこで、まずおかしなことが起きたのだ。
それまでレジを担当していたおばちゃんが隣のレジに移り、そして代わりに隣のレジからオーナーがやってきた。つまり、レジの人が急にスイッチしたのだ。
んーなんか嫌な予感がするな・・・と思いつつもさっさと終わらせたいので気にせず会計をすることに。
商品のバーコードを読み取ったあたりで、いつものように「ナナコカード入会しませんか~?」と声をかけてくるオーナー。
毎日、断っているんだからわかるだろ!と思いながら「あ、今日は結構です」といつものように断った。
そして、現金で支払い、お釣りを受け取ろうと手を出した時、考えられない事態が起きたのだ・・・・
なんと、オーナーは僕の差し出す手から30cmほど離れた高さでお釣りを離し、放り出すように渡してきたのだ。
当然、キャッチできず、辺りに散らばる小銭。それを見つめながら呆然とする僕に向かってオーナーが一言・・・
小銭のいらないナナコカードはいかがですか?
・・・・・。
IPPONグランプリでも通用しそうな強烈な一言だった。
で、僕はその言葉を聞いて何が起きたのかが理解できた。
恐らくあの店では、常連のくせにナナコカードに入会しない僕をブラックリストに入れており、次に来店したときにはオーナーに応対させよとの命令が出ていたのだろう。
そして、オーナーが無理やりにでも入会させる予定だったのだ。(知らんけど)
それから、僕は1カ月ほど行くのをやめた。
しかし、やはり「あ、お久しぶりです。ええ、元気にしてました。あ、あの件は、もう気にしないでください~ははは」みたいな面を引っ提げてまた通い始めてしまったのだ。
結局カードは作りました。